FIDFF2022受賞者
FIDFF2022グランプリ
ストレージマン(監督:萬野達郎)
世相を色濃く反映しつつ、ミステリアスさ、謎も含んだリアリティ溢れる内容、出演陣の怪演などなど、約40分の短い時間でも疲労を感じるほど濃密で、強度の高い王道ドラマ。
技術面もハイレベルで審査平均点も1位となり、堂々のグランプリとなりました。
10分部門最優秀作品
マンガガールズ
(監督:大門嵩、祁答院雄貴)

過去のFIDFFでは俳優として活躍していた大門さんと祁答院さんのおふたりが、今回は監督でカムバック。テンポよく、でもフシギな感覚で展開するマンガ・アニメーションと実写のハイブリッド作品として既に評判の短編ですが、噂に違わぬ面白さでした。ほぼ満場一致での最優秀選出です。
20分部門最優秀作品
果ての一閃 EPISODE ZERO
(監督:ハヤカワツクロ)

これはもう、観賞後に思わず(良い意味で)「何だ、今のは!」と叫びたくなるような作品です。こういう系統のアニメによく出てきそうな設定、セリフ、アクション…などなどの組み合わせが、逆に新鮮に感じるとは…!と驚かされました。これぞ渾身の一作。
40分部門最優秀作品
いろとりどりの
(監督:加藤大志)

2015年『きらわないでよ』でグランプリに輝いた加藤大志監督、7年ぶりの受賞です。俳優賞にも輝いた中村更紗さんがとにかく強く印象に残り、ラストも(観た人と話し合いたくなるような)余韻と少しの謎を残してくれます。撮影クオリティの高さも流石の一言。
60分部門最優秀作品
もうひとつのことば
(監督:堤真矢)

観ているこちらが少し気恥ずかしくなるような、でも英語での会話に妙に集中して耳を傾けてしまう、人と人とのコミュニケーションを巧みに描く不思議なラブコメディー。同時に「2020年の東京」もしっかりと捉えていて、今まで数多く撮られてきた「東京映画」の系譜に加わる作品となるでしょう。
100分部門最優秀作品
親子の河
(監督:望月葉子)

日本にいる時の、マスクも加わってより深く感じる閉塞感、人との壁。インドに行ってからの、人は溢れるほど多いのに徐々に心が拡がっていくかのような不思議な解放感、空間の広さ。監督兼主演の望月さんの感覚を観ているこちらも追体験しているかのような、言葉では簡単に表現できない映画です。ぜひスクリーンで体感してください。
最優秀ドキュメンタリー賞
標的
(監督:西嶋真司)

前作『抗い』に続き、各地の劇場でも公開されている西嶋監督の力作です。ジャーナリズムと政治のあり方、ネット上の匿名言論の牙が個人やその家族に向かった時の怖さ、そしてそれにどう抗していくのかを考えさせられます。『教育と愛国』に並ぶ今年度の必見作です。
文化映画賞
ガラッパどんと暮らす村
(監督:若見ありさ)

文化映画は実写ドキュメンタリーというイメージがありますが、この『ガラッパどんと暮らす村』は貴重な口伝・民話、方言を芸術性の高いアニメーションによって後世に遺す試みという点で、文化的な意義が非常に大きいこと。かつ誰もが楽しく観ることができる作品という点を鑑みて、このカテゴリーでの授賞に至りました。各地でこのような試みが広がればと思います。
3DCG賞
MARE
(監督:石田たまき)

キャラクターの造形や表情の変化、効果音、細部に至るまでの描写の精密さ、そしてセリフを挟まずとも現代を巧みに反映したストーリー、画面の向こうから感じるチーム力の高さなど…国内はもちろん海外でも高く評価されるであろう、3DCGによる短編作品の中では文句なしに最高の作品でした。
インディペンデントスピリッツ賞
この賞は作品自体の面白さに加え、手間と時間をかけて「この人でなければ考えつかない、実行できない」ことにチャレンジし、創意あふれる作品として世に出した熱意に敬意を示すものです。
作る過程を考えると気が遠くなるような、文字通りインディペンデントスピリッツに溢れた映像作品です。
ミラクルトイズ リカバー ザ ドクター
(監督:草刈成雄)

現代の世相を反映しつつ、パテーや8mmフィルム時代に作られたストップモーションのような味わいまで含んだ唯一無二の質感。人形の動きにも注目です。
古代戦殻ジェノサイダー 第22話OP・ED・CM集
(監督:細川晃佑)

当時を生きた人には懐かしく、生まれていない人にはYouTubeのネタのように見えるであろう『ジェノサイダー』の仕込みの細かさは必見です。
コメディ賞
捨てといて 捨てないで
(監督:山口森広)

生産性が、合理性が、エビデンスが…と言われる世の中。でも何が必要で必要じゃないのか、勝手に決める権利なんて誰にあるのか。そんな気持ちをシリアスに表現するのではなく、笑いの糖衣にくるんで出してくれる(でもなめていると苦さや酸っぱさもある)優しいコメディです。
愚問のぐぅもん
(監督:阪上彰馬)

こういう作品も待っていました!くだらないけど皮肉も効いた会話、もう一歩進めば下品になりそうなところをギリギリかわいく保ったキャラクターと絵柄。一度観たらリピート必至の怪作です。ぐぅもん、グッズ化したらいかがでしょうか!?