想像と創造 総評に変えて
日々、私たちが生きていて
なんのために生きているのか?
自分に生きる価値があるのか?
生きている意味って何なのか?
なんのために努力するのか?
幸せってなんなのか?
ふと、そんなことを考えたり
虚無感に囚われたりすることがあります。
それは、
心や思考が、今までの事柄や自分だけの記憶や体験だけで行われ、
自分以外の世界や現象や相手の気持ちを
想像=イメージ(Imagine)できないからだと思います。
想像力(Imagination)を鍛えるために有効なこと、
それはさまざまな文学やアートに触れること、
見知らぬ場所や知らない人と出会うこと、
そして何よりも、映画を見ることです。
映画は、ストーリー、映像、音響その全てを使って
知らなかったこと、知らなかった場所、
考えなかったこと、気づかなかった思い、
そんなことに想像を巡らせることができるのです。
今回のコンペティション作品でも、
さまざまな想像力を刺激するところがたくさんありました。
- 知らなかった国の知らなかった暮らしぶり『HOPE of TANZANIA』
- 争い、破壊の先に何があるのか『小さな祈り』
- 隣のその人が心の痛みを抱えているかもしれないこと『あなたが誰で、どんなに孤独だろうとも』
- 言葉だけではなく、内側に秘めたものに想いを馳せる『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』
- もしこの世から本がなくなったら『書架の物語』
- もしも、身近な人は変わらないのに、周りの世界が変わってしまったら『サーシャの坂道』
- 恋人や、家族以外の新しい関係性ができたら『たいせつなひと(仮)』
- 幸せそうなカップルの内側って本当はどうなの?『独りになるまで』
- 異なるパーソナリティや、孤独とどう寄り添うか『ブライトロード303号室奥田美紀様宛て』
- 私の人生って意味があるの?『ヨビとアマリ』
- 心の距離の縮め方って『深骨』
- 家族ってめんどくさくて、やっぱり愛おしい『たまには蜂蜜を。』
- 国が違っても僕らは分かり合えるかな?『ミヌとりえ』
- もしネット炎上してしまったら『ヒコットランドマーチ』
- もし運命を変えるものと出会ってしまったら『コラン・ド・プランシーの万年筆』
- 自分が世界の運命を左右する人物だと知ったら『フューチャー!フューチャー!』
- 家族の愛情って本物なの?『正しい家族の付き合い方』
- 老いていく親とどう向き合うのか『遠く離れて』
- 親子とは、家を継いで生きるとは『トワの欠片』
- もし超気まずい現場に遭遇してしまったら『つくもさん』
- もし祖父と中身が入れ替わってしまったら『米寿の伝言』
- 生きづらい状況の時、こんな事、こんな人の出会いがあったら『寄り鯨の声を聴く』
- 好きなのにすれ違ってしまうのはなぜ?『ゴールド』
ノミネート作品、全てに驚きや感動や怒りや発見がありました。
どれが賞を取ってもいいと思える、ハイレベルな作品ばかりでした。
俳優賞は『コラン・ド・プランシーの万年筆』
稲垣成弥 さんを選ばせていただきました。
ある種の現実離れした設定や状況に置かれた主人公の戸惑いや葛藤を、繊細に、かつ力強く演じ、リアルな感情を引き出し、作品に深みを与えてくれました。
これからの新しい役への挑戦への期待も込めて贈らせていただきました。
短編部門優秀賞の『ミヌとりえ』
日韓に横たわるさまざまな過去に目線を向けつつ、個人がつながることで、その先にある未来を感じさせてくれる、素晴らしいテーマ・ストーリーの作品で、俳優、撮影、照明、録音、ロケーション、美術、音楽など全てがハイ・クオリティで、いつまでも心に残る作品でした。
全 辰隆(チョンジニュン) 監督の次回作にも期待しています。
長編部門優秀賞の『ゴールド』
知多良(ちた りょう)監督は、登場人物を多面的にとらえ、その関係性の描写にリアリティと深みを与えていました。
また撮影や録音など、映画手法でも目を見張るものがあり、中でもクライマックスの表現は圧倒されるものがありました。
音楽も作品と寄り添い印象に残る作品でした。これからの展開が楽しみですし、応援していきたいと思っています。
グランプリの『ヒコットランドマーチ』
chavo(チャボ)監督は、架空の映画予告編を数作作っているとはいえ、本作が初短編作品、しかもスタッフは監督以外1人しかいなかったそうです。しかし、見ていただくとそんなことは微塵も感じさせない、ちゃんとしたコメディになっています。しかもSNS炎上というシリアスになりがちなテーマを描きつつ、その先の一筋の光、希望を感じさせる鮮やかなエンディングに唸らされました。グランプリを選ぶ中、さまざまな議論がありましたが、何より一番これからの作品を見てみたい、いったいこの監督が作り続けたらどんな未来を見せてくれるのか、期待させてくれたのはchavo(チャボ)監督でした。
これからも監督の作品に注目して、機会があれば、制作のお手伝いをしていきたいと思っています!
『フューチャー!フューチャー!』の
主人公マコトが受験勉強をするシーンを見ていて、改めて気付かされたことがありました。
「勉強って、なんのためにするんだろう」
それは、より良い未来を自分の手で作るためだ、ということ。
考えてみれば、
私たちが何故生きるのか?
生きる価値があるのか?
それは、
どれだけより良い未来を自分たちで作っていけるのか?
ということかもしれません。
そのための想像力を持つために、
私たちは映画を見続けるのかもしれません。
映画を作る皆さまは、創造力(Creativity)を発揮して、
これからの未来を作るヒントとなるような作品を創造(Creation)していってほしいと思います。
そして、また福岡インディペンデント映画祭に応募していただきたいと思っています。
また、ぜひ映画祭でお会いできるのを楽しみにしています。
福岡インディペンデント映画祭実行委員会
コンペティション担当 太田勝一郎
映画に関わるすべての皆様へ
映画が大好きです。
海も山も時間さえも飛び越えて、世界を、過去を、未来を知ることができる。
その時間が大好きです。
映画は作る人がいて、上映する場所があり、観る人がいて、感想を言い合う仲間がいて。
全部が揃って「映画」だと思います。
今年もたくさんの世界を、過去を、未来を知ることが出来ました。
それぞれに感じるものがありました。
幸せな時間でした。
映画関係者の皆さま、観客の皆さま、
第16回福岡インディペンデント映画祭2024 に関わってくださった
全ての皆さまに感謝申し上げます。
『原点』を胸に。
また来年、お会いしましょう!
ありがとうございました。
福岡インディペンデント映画祭実行委員会
代表 原田幸子